明治神宮奉納
生命樹絵図縁起
平成十四年九月
日本の神語りの書物である古事記の中に、
「まきむくの 日代の宮は 朝日の 日照る宮 夕日の 日がける宮 竹の根の 根垂宮
木の根の 根ばふ宮 八百土よし い築きの宮 真木さく 桧の御門 新嘗屋に 生ひ立てる 百足る 槻が枝が 上つ枝は 天を覆へり 中つ枝は 東を覆へり 下枝は 鄙を覆へり 上つ枝の 枝の末葉は 中つ枝に 落ち触らばへ 中つ枝の 枝び末葉は 下つ枝に 落ち触らばへ 下枝の 枝の末葉は あり衣の 三重の子が 指挙がせる 瑞玉うきに 浮きし脂 落ちなづさひ 水こおろこおろに こしも あやにかしこし 高光る 日の御子 事の 語り事も 是をば」
という歌が詠まれている。
神聖な巨大樹が地にしっかりと根を張り、上の枝が天を覆い、中程の枝が東の国を覆い、下枝が田舎を覆うとある。混沌から陰と陽の二気に分かれ、万物が創生されて、その万物を神聖な巨大樹が覆いつつみ、流れを繋いでいく。
全ての命を包み込み、幽玄から顕現へ、また顕現から幽玄へと脈々と続く宇宙の流れを促す。四季の移り変わりの中で、花が咲いては散り、命を更新していくものとして、宇宙の流れを結実する。
陰陽五行の中で冬は北で色が黒、春は東で色が青、夏は南で色が赤、秋は西で色が白とされている。其々の季節の間に前の季節を終わらせ、新しい季節を促す土用があるが色は黄色である。冬と秋が陰、春と夏が陽とされているが、数では偶数は陰、奇数は陽である。流れを生み出す為に陰の冬に黒に黒い花を一種配置、陽の春に青い花を二種配置、陽の夏に赤い花を二種配置陰の秋に白い花を三種配置した。
土用は門にも例えらるが、東北の鬼門は流れを促し、東南の地門は根を張るという意味で下に流れを作り、西南の門は暑気の土用なので短い流れを、西北の天門は神の場所なので気を呼び込むような流れに黄色い花を配置した。
命の源としての生命樹を五穀豊穣を祈願して、また宇宙への感謝を込めて描いたものである。