常世長鳴鳥絵図縁起

石清水八幡奉納
常世長鳴鳥絵図縁起
平成十五年一月

日本の神を語る書である古事記の中に、天の岩屋戸の話がある。
勇猛迅速な神、建速須佐之男命が、天高く照り給う大御神である天照大御神の神聖な機屋の棟に穴を開けて毛を逆さに剥ぎ取った馬を機屋の屋根から落とし入れて、機織女が驚いて死んでしまった。
それを見た天照大御神は、恐れて天の岩屋戸の中に隠られてしまい、日神の天照大御神がお隠れになったので、世の中が全て暗闇になり、永遠の闇が続いた。あらゆる邪神が騒ぎ、禍がいっせいに起こる中で、八百万の神々が天の安河の河原に集まり、善後策を相談したが、多くの思慮を兼ね備えた智恵の神の思金神が、まず始めに常世長鳴鳥を鳴かせたとある。
常世とは永遠の世界であり、海の彼方にあると言われる。あらゆる命の源の異郷である。長鳴鳥は、声を長く引いて鳴く鶏を意味する。息の長い鳥である為に、永遠の常世の鳥とされた。
鳴く声が、あらゆる邪気を祓い清め、太陽を呼ぶと言われる鶏が、日神のお使いとして、天照大御神を天の岩屋戸から誘い出す第一の手として遣われたのである。
鳥は酉でもあり、方角は西、色は白とされている。白い鳥は、邪気を祓い清める神の化身として昔から崇められたが、天の岩屋戸の話は、日神が隠り、穢れを祓う神聖な常世長鳴鳥の声を始めに新しい神命として生まれ出るとある。
常世長鳴鳥を邪気が祓い清められて新たな歳が実り豊かな物であるようにと願い描いた。酉の西の都の神様の許へ御納めします。

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