出雲大社奉納
岩鞍座上蛇図縁起
平成十四年十月

出雲国に古くから伝わる祭に、神在祭がある。
出雲の浦に海神の使いの龍蛇が上るが、その姿は背黒腹黄、尾に神紋の扇を負うとされている。龍蛇はトグロを巻き、火を吐くような大口を開けて、穢れを追い払う。
十月、亥月は、大和名で「神無月」という。亡くなられた母神の伊邪那美神の追慕の為、八百万の御子神々が、根の堅州国の出雲に集まられて、日本国中で一時、神不在となるので、「神無月」と呼ばれている。出雲では日本中の八百万の神々が参集するので「神在祭」となる。
出雲の海原へ穢れを流し清め、神送りをする事で、凶事、災難が取り去られる。
八百万の全ての神々が不在となり、日本国中、一時的に空となる事で穢れが禊払われ清められて、その結果、新しい命が更新される。
岩鞍は「クラ」で、暗い穴、物を収める所、そして母の胎内を意味する。禊をして、清められた新しい命として生まれ変わるのには、一時的に母の胎内を通り、身を削ぎ落とさなければならない。「クラ」を通過する事で、穢れを脱ぎ捨てて身を清め、災難や凶事を払う。
岩鞍座上蛇図は、禊の場所のクラで猛々しい龍蛇神が邪気を払うものである。
出雲の神様の許にお納め致します。

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